〜AN/ALQ-135〜

AN/ALQ-135TEWSはTactical Electronic Warfare System戦術電子戦システムの略。
AN/ALE-45チャフフレアディスペンサー、AN/ALQ-128電子戦警戒装置、AN/ALR-56レーダー警戒受信機、AN/ALE-55光ファイバー曳航式デコイを総括する、電子対抗手段(ECM)の中核に当たるシステムで、クルーがTEWSの設定を行う事によりジャミングのON/OFF、チャフやフレアの投下パターンや投下指示を行い、また、各部位の状況を監視しクルーに情報を与えます。
またジャミングを行うことにより、脅威のレーダー電波と同じ(もしくは近い)周波の電波を照射し、干渉させレーダー射程を短くします。TEWSに限らず、戦闘機搭載のジャミング装置ではレーダーを完全に無効化することは出来ません。
また、ジャミングは強力な電波を放出するため確定的な位置は知られずとも自己の存在は知られてしまいます(通常、ジャミングはミュージックと呼ばれている)。隠密行動が要求される地形追随飛行などでは使用されません。

現代の空対空戦闘で明暗を分ける大きな要素は三つ、一つ目がミサイル。二つ目が情報分配システム。三つ目が電子戦です。特に電子戦システムは貴重な機体を無事に帰す事、クルーが生きてかえってこれることを左右する非常に重要な要素です。レーダーや地対空/空対空ミサイルの性能が飛躍的に向上して以来、電子戦能力の良し悪しが生死を左右すると言っても過言では無くなりました。
事実、第三次中東戦争では、アラブ諸国側の奇襲と大量に配備された地対空ミサイル網により、自慢の空軍戦闘機を大量に撃墜され苦汁をなめさせられたイスラエルは、その後電子戦システムを大幅に更新し、また最新の戦闘機を積極的に採用した結果、アラブ諸国側のレーダーやミサイルは、探知できない、追尾できない、あらぬ方向へ飛んで行くと、ただの打ち上げロケットと化してしまいました。

TEWS自体に何ら問題は無かったわけでは有りません。低周波対抗能力が低い、自己診断装置の信頼性が低い、クルーへの脅威情報伝達が遅い等多くの問題を抱えておりましたが、F-15E改修に割り当てられた予算の多くがTEWS改善に使用され、現在F-15Eに装備されているAN/ALQ-135(V)band3/1.5は従来の物よりもクルーの操作が必要最低限で最大限の効力を発揮します。AN/ALQ-135TEWS(V)は21世紀のテクノロジーが取り入れられており、F-15の機体基本設計は30年も昔のものであっても最新の戦闘機に一切劣ることは有りません。むしろ実績を重ねていると言う点では勝っています。

なお、Band3は高い周波数(10-20GHz)に対してジャミングを行うモジュール、band1.5は低い周波数(2-3Ghz)に対してジャミングを行うモジュール。1.5の基本的な信号インターフェースやデータ処理はBand3に完全に依存しています。

電子戦の進歩は日進月歩ならぬ秒進分歩と言われており、2002年現在生産中の最終ロットのストライクイーグルはもちろん、型の古いストライクイーグルや、F-15C/Dイーグルにも逐次TEWSの改良/交換が行われています。



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